ランド・オブ・プレンティ(44作品目)

最初に見たヴェンダースの映画は「パリ、テキサス」。当時高校1年。何となくヨーロッパへの憧れからタイトルに惹かれたのと、ナスターシャ・キンスキーのちょっとエロい雰囲気が好きだった(何ともませガキ)。ふたを開けてみたらアメリカが舞台のロードムービーで、ヨーロッパのヨの字も出てこない。しかし大傑作だった。以後、単館上映の連続記録を打ち立てた「ベルリン・天使の歌」も観たし、もちろん「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」も。ヴェンダースの映画は外せないのだ。ようやく見に行った。
今回もやっぱり有楽町シネカノンでの単館上映。
9.11から約2年後のアメリカが舞台。ベトナム帰還兵叔父と、病に倒れた母の手紙を持ってイスラエルからアメリカにやってきた姪が、あるホームレス殺人事件の被害者の兄へ遺体を届ける旅に出ることになる。
叔父は枯れ葉剤の後遺症が残り「1人で」アメリカを守ろうとしてスラムをパトロールしている。右寄りの愛国心からくる正義感、アラブ人に対する嫌悪むき出しの汚い言葉など、かなり絶望的な人物。だが、その旅を通してほんの少しだが自分のしていることを認識出来るようになっていく。姪が携えた妹の手紙も読み、ふたりの距離も縮まっていく。グラウンドゼロをふたりで訪れるシーンでエンディング。
ベトナム戦争、パレスチナ問題、人種差別、少年犯罪、9.11…米国が抱える病は本当に根深いものばかりだ。
ちょうど今読んでいる辺見庸と坂本龍一の対談「反定義」ともシンクロしてしまいとてもヘヴィーで辛かったが、希望の萌芽も感じられた。今の自分では★★★☆。けれど、何度も見返すと★が増えるだろう、間違いなく。
パリ、テキサスだって、(ヴェンダースじゃないけど)トラフィックだってそうだったからね。
●ランド・オブ・プレンティ
http://landofplenty.jp/

投稿者: mellowtone

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