Scenarios/Andy Milne, Gregoire Maret

Scenarios
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Andy Milne, Gregoire Maret
以前グレゴア・マレ(hca)も参加していたDapp Theoryのアンディ・ミルン(p)とグレゴアの共同名義によるアルバム。
ハーモニカとピアノデュオのアルバムといえば、ビル・エヴァンスの「Affinity」、トゥーツ&ケニー・ワーナーの「この素晴らしき世界に」が有名ですが、この作品はそれらと趣を異にします。
美しいメロディラインと転調がハンコックのChan’s Song(映画’Round Midnightサントラ収録)を思わせるようなAs Far As We Know(3曲目、グレゴア作曲)もありますが、全体的には、アーティスティックな、とんがった、生々しい、美しい仕上がりのアルバムです。ポップではありません。
例えば、非常に幻想的なPharos Of Alexandria(2曲目)。まるで尺八のようにハスキーで妖しいピッチのハーモニカの音色。こんなの他のどんなクロマティック・ハーモニカのアルバムでも聴いたことがありません。そして衝撃的なHouse Of Fisher(6曲目)。低音域でごろごろ鳴らしつつ4度ヴォイシングで訥々と語るピアノに、なんとグレゴアはクロマティック・ハーモニカのスライドをパーカションとしてカチャカチャと“演奏”。ただのギミックではなく、これがアルバムの持つ雰囲気にドンピシャではまっているのですね。ラストのMoon River(「あの」Moon River)も、オクターブユニゾン(けどリズムはバラバラ)の女性ボーカルが絡むという一筋縄ではいかないアレンジ。レコーディングアートのよう。
クロマティック・ハーモニカの楽器としての可能性を押し広げようと格闘しているグレゴアの意気込みが伝わってきます。
あ、グレゴア、グレゴアってうるさいですが、アンディ・ミルンのピアノもめっちゃカッコイイです。ハンコックのリズム感にエヴァンスの緊張感が合体したような、素晴らしい演奏です。

投稿者: mellowtone

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