いつか書かねばと思って書いていなかったネタがあった。
それは、西脇辰弥さんについてだ。
いつも長文だけど、今日は特別に長いです。覚悟しぃや。
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とあるサイトで知り合った友達が作った曲に、シンセで再現した「なんちゃってハーモニカ」のソロがフィーチャーされていた。とっても面白い曲のだが、確か他にもそんな曲があったなと思ってiPodをぐりぐり。笠原弘子の「夏物語」という曲を探し出し、通勤の最中リピートして何度も聞いた。
この曲は西脇辰弥さんの手によるアレンジだ。
西脇辰弥。
http://www.atmsphr.com/
キーボーディストであり、作曲家・アレンジャーであり、クロマティックハーモニカ奏者。僕が心から尊敬する職人肌のミュージシャンである。
「夏物語」はおそらく、まだ西脇さんがハーモニカ奏者になる以前の曲だが、不思議と西脇さんの本物のハーモニカっぽいフレーズが入っていて、何度もニタッとしてしまった。
これが、今日、西脇辰弥さんについて書いてみるかと思ったきっかけだ。
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1988年頃だったか。
千葉で学生生活を送っていた頃、レンタルCDでバイトしながらたまたま聴いた谷村有美のアルバム「Hear」と「Prism」。
彼女の透明感のあるハイトーンの声も好きになったが、アレンジのカッコ良さに一発で引き込まれてしまった。「Half Moon」や「眠れぬ夜の恋人たち」のような転調を多用したバラードをはじめ、何気ない曲中にきらっと光るシンセの音色があったり、最初はエレキギターのソロだと思っていたら、実はシンセソロだったり。
クレジットをチェックして、それらがTatsuya Nishiwakiという人の手によるものだと知った。
それから1年ぐらいたっただろうか。
当時、キーボーディストの端くれとしてChick Corea Elektric Bandなど愛聴していた。
特にドラマーのDave Wecklが大好きで、ファーストソロアルバム「Master Plan」は超ヘビーローテーション。変拍子ばりばり、かつポップ。彼が得意なラテンフィールのFestival De Ritmoなんて特にお気に入り。
当時僕はすでに曲作りをチマチマと始めていて、日夜ノリの良いドラムパターンを作ることに心血注いでいたのだが、そんなある日、何気なくテレビを見ていると、アイドルグループのribbonの新曲のプロモが流れた。
やたらとカッコいい打ち込みのラテンサウンド。まるでDave Wecklを打ち込みで再現したような…それでいて打ち込みらしいスクェアなリズムも残されている…ホーンセクションも、シンセベースも、何から何までめちゃくちゃかっこよくて、とてもアイドルグループの曲だとは思えない。しばし目と耳がテレビに釘付け。
なんだコレは???
バイト先で、恥ずかしくてドキドキしながら棚からribbonのアルバム「Jessica」持ってきて、CDプレーヤーにセット。例の曲の曲名は「太陽の行方」だった。
誰だよ、この曲のアレンジャー?
Tatsuya Nishiwaki
ぎょえー!!!
これがトドメだった。
完全に西脇辰弥さんの大ファンになった。
Tatsuya Nishiwakiの曲が聴きたい!
彼はきっと俺のために曲を作っているに違いない!(←すごい誤解)
がしかし、大問題が。
今でこそネットでちょちょいのちょいだが、いったい全体「アレンジャー」でどうやって曲を探せばよいのさ。
結局、バイト先で“らしい”CDを持ってきて、クレジット見てはため息をつく、という日々とともに、西脇さんの曲が聴きたくなると、谷村有美とribbonを聴いていた。
◆ ◆ ◆
音楽好きの学生君も、紆余曲折を経て、なんとか社会人となり、パソコン通信niftyserveで初のEメールも経験した。
しばらくすると「インターネット」と「ホームページ」なるものが世の中に浸透していく。
1995年、1996年あたりだったと思う。
キーワードをテキストボックスに入力して、検索。
あーんな言葉、こーんなコトバを検索しては、喜んでいた。
しかし、サイトがないレコード会社だってざらにあったし、アーティストの公式サイトだってほとんどなかった。
まさかなぁ、
と思って入力した「西脇辰弥」というキーワードで、とんでもないページに出くわしてしまった。
http://homepage3.nifty.com/saburoku/nishiwaki/
初めてインターネットのポテンシャルを体感した瞬間だった。俺と同じこと考えていて、全然俺よりすごい人がいるのね、と絶句もした。
(後に管理人さんとはメールをやりとりした。ほとんど当時のままそのサイトは残っていて、ちょっと嬉しい)
そして、中古CD探しの日々が始まる。
地味なアーティスト、かつ廃盤が多く、大変苦労した。
友人たちにも「中古CD店で見かけたら教えてくれ」と未入手リストをメールで送っては協力してもらった。「あったぞ~」なんてかかってくる電話に驚喜していたものだ。
ほどなくYahoo!オークションがスタート!この中の何枚かは定価よりも高かろうがかまわず落札した。
何年か前にこのサイトで紹介されたものはほぼ(※)入手した。
そうして手に入れた、西脇さんがアレンジャーとして活動を始めた当時の珠玉の作品群、iPodに入れっぱなしで今でも本当によく聴いている。
◆ ◆ ◆
生命が誕生するのも偶然なら、生まれてからだって偶然の中で生きていくものだ。
僕はそれほど勤勉でもないリスナーだし、へっぽこクリエイターだけど、音楽がなかったら生きていけない。
そんな自分に、もっとも影響を及ぼしたミュージシャンの一人と、その音楽に、こうして邂逅した。
(後編に続く)
(※)ヤフオクも最近はチェックしてないが、Lip’sの「これ、うまいぢゃん」は相当マニアックなシロモノらしく、入手困難みたい。
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